僕はわかりやすい演技をする役者が嫌いだ。
面白い場面を「ここが面白いですよ」とあえて過剰に表現する、あのタイプだ。そんな演技がかえってリアルさを失わせている。そんな表現、現実にはしないだろうと常々思っていた。
バカリズム原作のドラマ「ホットスポット」の最終話を観た。
ティックトックでたまたまシーンの一部を切り取った動画(公式)が流れてきて、面白いじゃんと思い、追いかけて視聴した。聴いているトレイルランニングのポッドキャスト「エスカレーターに乗るトレイルランナー」でも面白いと言及されていて興味も湧いた。彼らの住む山梨でのドラマだという観点からも話題にあがっていたのだ。
このドラマの特筆すべき点は、セリフのテンポと内容が現実的なのだ。日常的な会話であることに重きを置いている(ような気がする)。配役もそうしたセリフがセリフであるような、嘘くさくない演技ができる高レベルな役者を選んでいると思う。
ハイテンションな役者があまり登場しない点も重要だ。日本のドラマにはストーリー・演技・セリフまでが非現実的であるからつまらない。現実という緊張感がドラマを面白くさせるのに、フィクションと言う名のもとにそれら緊迫感から逃避してしまっている…と僕は思っている。大仰な演技をすればドラマが面白くなる…わけはない。
ところがこのドラマは、印象が強くない、どこにでもいるような、一般人の雰囲気を醸し出す役者たちが起用されている。そこにはまだ「リアル」が残っているのだ。
つまり「地上波しぐさ」が必要最低限まで削り取られているような印象すらも抱いた。
地上波しぐさとは、テレビドラマに特有の大げさな仕草や演技のことだが、このドラマではそれが極力排除されている。
しかも、登場するロケ地は実在する施設が出てくる。出演者が食べるお菓子も、なんの伏せ字や隠しもしない、リアルに売られているお菓子をそのまま食べる。まさにいま、山梨にいったら、あの宇宙人とその周囲の人たちに会えるのではないか…と錯覚すらする。そもそも舞台を東京でもなく山梨の田舎にしたのも、どこかリアル。UFOが不時着しても確かに人間に見つからなさそう…。
そのうえで。
宇宙人、未来人、超能力者が現れて非現実的なストーリーが加わる。意外性があり、だからこそ面白い。要するに、僕らが生きている「現実」に突如として宇宙人が入ってきたらどうなる?という妄想を紡いだコメディドラマなのだ。
半分フィクションのようであって、半分、ノンフィクション。これが僕が面白いと思ったポイントである。
日本のテレビドラマというと、どこか作り物感が漂う。セリフ回しや表情、仕草、すべてが「ドラマ」であることを主張しているかのように。現実の人間は、感情を表現するときにわざわざ大げさな表情を作らない。喜びや悲しみを伝えるときに、過剰な身振り手振りはしない。むしろ、抑制された表情や言葉の間にこそ、本当の感情が宿るものだろう。
繰り返しになるが、ホットスポットは、そうした「リアル」を大切にしているように見える。登場人物たちは普通の人間のように振る舞い、普通の人間のように会話する。その日常の風景に、非日常的な要素が入り込むことで生まれる違和感こそが、このドラマの魅力なのだ。
僕はこれまで、バカリズム原作のドラマに対して先入観を持っていた。お笑い芸人だからこそ、地上波しぐさに則った過剰な演技をするドラマを作るのだろう…と、今まで敬遠していたが、今後のドラマにも期待してしまうし、たぶん、観ちゃう。