休まないとイライラする
文字通り「無休」の職場
僕は以前、極端に休みの少ない仕事に就いていた。
その経験から、休養の重要性と、それが欠如した環境がもたらす深刻な影響について、身を持って知っている
繁忙期になると、約1ヶ月も無休で働くことが年に数回あった。
文字通り、1日も休みがないのだ。
そんな生活を続けていると、後半にストレスでイライラが止まらなくなる。
集合住宅に住んでいたせいか、周りの生活音にも過敏になってしまい、ちょっとした物音でイライラしてしまう。
眠れない日々が続き、疲れも取れない。
ストレスからか、常に腹痛や下痢にも悩まされた。
職場全体を見ても、従業員のミスが増え、商品の質も低下していく。
毎朝、出勤することが苦痛でしかなく、土日に放送されるTV番組が朝から浮かれ気味なのには腹がたった。
イライラを遠ざける
そんな日々を送る中で、僕は気づいた。
実は「ぼうっとする時間」が非常に大切で、何もせずに何かを考える、そんな時間が必要なんだと。
こうした行為をしないと、イライラすることばかりに気持ちが向いてしまい、新たなイライラを生み出してしまう。
そのイライラの多くは、自分ではどうすることもできない。
意味がないと分かっていても、イライラを解消したいがために、考えずにはいられない。
イライラが起こる原因は、それ自体がイライラすることであって、それを防止する策を考えることも自分の力では無理で…。
そして気がついたのは、イライラを止めるには休むしかない。
休んで、イライラから自分を遠ざけるのがいちばん手っ取り早いのだ。
いらいらを忘れること、自分の身体から一旦、距離を置くことがとてつもなく重要だと気がついた。
さらに、イライラの解決策は分かっているのに、それに至る道のりは果てしなく遠く面倒なのも事実だ。
結局のところ、休むことが最大の解決策なのだ。
休みのない業態は長続きしない。
従業員は次々と辞めていき、職場の雰囲気も悪くなる。
育児や介護、看護など、家庭の用事をこなせないと、家族関係までもが破綻してしまう。
婚期を逃したり、子供を持つ機会を失ったりする人も少なくないだろう。
解決策は休むことなのに、休むことのできない状況に追い込まれる…こうした企業は既に破綻しているといえる。
休みがない企業と、休みのある企業で二極化する
生活環境が変わると社員は辞める
これからの社会は、おそらく二極化していくと僕は考えている。
一方では、週休3日制を導入する企業がますます増えていくだろう。
人工知能が頭脳労働を担い、人間はAIの及ばない部分、つまり「物理的にモノを動かす」という作業を担うようになる。
そうなると、肉体労働が中心となるため、休養の重要性はより一層高まる。
しかし他方では、資本主義的な考えから、休日の取得を厳しく制限する企業も多くなるだろう。
人間がモノを動かして、あるいは何かを組み立てて生産することが「労働」であり、それにより「商品」が生産される。
そしてその「商品」を販売することで「利益」が生まれる。
結果として「利益」を生みださせたい経営者(使用者)は、生産時間を増やすことによって「利益」を生み出そうとする。
結果として経営者側と労働者側での齟齬が生じ、ライフスタイルに合わなくなることで労働者が会社を去っていく。
ちなみに、男性であれば結婚前は労働時間にさほど条件はなかったのだが、結婚し、子どもが生まれると周囲とのギャップによって生活が成り立たくなり、やめてしまうケースも多いようだ。
つまり、結果として労働者の生活環境を改善できない企業は、いくら労働者を教育しても辞めてしまうという、負のサイクルに陥ってしまう。
他社や他産業から労働者を奪い取る競争が始まっている
実は、ここにチャンスがある。
人口減少が進み、人手不足が深刻化する中で、いかに他業種や他企業から「人材を奪い取るか」が重要になってくる。
機械化が進まない現場では、人間の手が必要不可欠だ。
人がいなければ、仕事が始まらず、モノが作れず、最悪の場合は廃業に追い込まれる。
だからこそ、休日の重要性を理解し、実行している会社に人材が移動するのは確実だと僕は考えている。
特に賃金の低い地方部では、この傾向がより顕著になるだろう。
いままで成り立っていたものが、月日を重ねる毎に不調和をきたし、気がつけば取り返しのつかない状態にまで陥る。
このとき、必要条件として重要なのは給料だ。
しかし、人材が多いほど会社は円滑に回る。
そして、人手が多ければ多いほど、実は給与も高く設定できる可能性がある。
人材も若手が入ることで、「作業効率」は高齢者主体の企業に比べて遥かに高い。
なぜなら、十分な休養を取れる環境では生産性が上がり、結果として会社の業績も向上するからだ。
休養の重要性を理解し、それを実践できる企業こそが、これからの時代を生き抜いていけるのは間違いない。
人材を奪え。