僕は以前、極端に休みの少ない仕事に就いていた。
その経験から、休養の重要性と、それが欠如した環境がもたらす深刻な影響について、いまでも考えることがある。
繁忙期になると、約1ヶ月も無休で働くことがあった。
そんな生活を続けていると、後半にストレスでイライラが止まらなくなる。
集合住宅に住んでいたせいか、周りの生活音にも過敏になってしまい、ちょっとした物音でイライラしてしまう。
眠れない日々が続き、疲れも取れない。
ぼうっとする時間が欲しいのに、そんな余裕すらない。
ストレスからか、常に腹痛や下痢に悩まされた。
職場全体を見ても、従業員のミスが増え、商品の質も低下していく。
毎朝、出勤することが苦痛でしかなかった。
そんな日々を送る中で、僕は気づいた。
実は先述した「ぼうっとする時間」が非常に大切なんだと。
何もせずに何かを考える、そんな時間が必要なんだと。
この行為をしないと、イライラすることばかりに気持ちが向いてしまい、新たなイライラを生み出してしまう。
そのイライラの多くは、自分ではどうすることもできないものだった。
意味がないと分かっていても、イライラを解消したいがために、考えずにはいられない。
そして気がついたのは、イライラを止めるには休むしかない。
休んで、イライラから自分を遠ざけるのがいちばん手っ取り早い。
さらに、イライラの解決策は分かっているのに、それに至る道のりは果てしなく遠く面倒なのも事実だ。
結局のところ、休むことが最大の解決策なのだ。
休みのない業態は長続きしない。
従業員は次々と辞めていき、職場の雰囲気も悪くなる。
育児や介護、看護など、家庭の用事をこなせないと、家族関係までもが破綻してしまう。
婚期を逃したり、子供を持つ機会を失ったりする人も少なくない。
解決策は休むことなのに、休むことのできない状況に追い込まれる…こうした企業は既に破綻しているといえるだろう。
これからの社会は、おそらく二極化していくと僕は考えている。
一方では、週休3日制を導入する企業がますます増えていくだろう。
人工知能が頭脳労働を担い、人間はAIの及ばない部分、つまり「物理的にモノを動かす」という作業を担うようになる。
そうなると、肉体労働が中心となるため、休養の重要性はより一層高まる。
しかし他方では、資本主義的な考えから、休日の取得を厳しく制限する企業も多くなるだろう。
そうした企業は負のサイクルに陥ってしまう。
実は、ここにチャンスがある。
人口減少が進み、人手不足が深刻化する中で、いかに他業種や他企業から「人材を奪い取るか」が重要になってくる。
機械化が進まない現場では、人間の手が必要不可欠だ。
人がいなければ、仕事が始まらず、最悪の場合は廃業に追い込まれる。
だからこそ、休日の重要性を理解し、実行している会社に人材が移動するのは確実だと僕は考えている。
特に賃金の低い地方部では、この傾向がより顕著になるだろう。
このとき、必要条件として重要なのは給料だ。
しかし、人材が多いほど会社は円滑に回る。
そして、人手が多ければ多いほど、実は給与も高く設定できる可能性がある。
人材も若手が入ることで、「作業効率」は高齢者主体の企業に比べて遥かに高い。
なぜなら、十分な休養を取れる環境では生産性が上がり、結果として会社の業績も向上するからだ。
僕たちは、働き方の大きな転換期に立っている。
休養の重要性を理解し、それを実践できる企業こそが、これからの時代を生き抜いていけるのは間違いない。
人材を奪え。