「クセの強さ」って思いのほか重要になっている?

神奈川県民の僕が評する立場にないことはわきまえたうえで。
2024年7月7日に行われた東京都知事選は、投票率が60%にも及んだことを踏まえると、歴史的にも大きな転換点を迎えた選挙戦であったように思う。

いま、メディアやネットであらゆる議論が巻き起こっているが、動画の力は大きいと感じた。

もはや、テキストで情報を伝えることは困難であり、読み手がいない。
テレビも些末な情報しか伝えない上に、泡沫とされた候補の情勢すら見誤った。
若い世代だけではなく、現役世代の極めて定年に近い年齢層でさえ、インターネットを通して情報を得ているからであり、メディアの偏向報道のような情報操作が難しくなった。
つまり、文字を読むことが忌避される傾向にあり新聞・雑誌の類は買われないし読まれない。
テレビは多くの(個人個人に最適化された)情報を伝えることができないし、やらない。
結果としてマスメディアからの情報ではなく、Twitter(X)などをはじめとするSNSに目が向くことになる。

ただし、SNSにはアルゴリズムとして「フィルターバブル」のような機構が働いていて、自分の得たい情報のみが矢継ぎ早に画面に表示される。
結果として対立候補や他の候補に関する情報を得る機会はだいぶ減るのだろう。
つまり、テレビなどのメディアがその役目を果たすことができなくなり、ネットに流れた層が強固な支持を得てしまったというだけで、若い世代がとある候補のみを支持しているわけではない。
事実、僕のSNSにはネット戦略に長けているとされる某候補の、マイナスイメージを持った投稿ばかりが流れてきた。
僕のSNSは、僕がその候補を支持しているわけではない…と、結果的に判断したのだろう。
そして、その候補を支持していないとされる人間に向けた投稿を随時、タイムラインに積み重ねることとなった。

そして本題。
もはや「動画なくして選挙戦は戦えない」と感じた。
文章や画像のように、小手先でこねくり回して候補者の素性を伝えるのはもはや無理で、受け手には届かない。
むしろ、いかに短く、いかに刺激的な動画を投入し、拡散させ、その上で有権者に判断してもらうという流れが必須になったのではないだろうか。

以前、動画の気持ち悪さについて投稿した。

動画で食べていく場合には、このどれを指向して制作するかにも拠るのだろうが、「気持ち悪い動画」は案外、何度も見てしまう。 中毒性がある。 そうしたコンテンツを忌避する企業もあるだろうが、ひとが何を嫌い、そして好むのか。 おおっぴらにしないまでも、潜在的な好き嫌いは確実にある。 人気の動画にはこっそりとそのような要素が入っているよね…というハナシをダラダラしたのだった。

引用元: 動画のこれからについてダラダラ話す – 単なる読書録

「クセが強い」とはつまり、「刺激が強い」ということであり、そこに潜む「違和感」の存在をどうしてもキャッチしてしまうセンサーが、万人にはある程度、備わっているのだと思う。
それは生きていくために必要な「本能」のようなもので、かといって人間社会の文化的な生活の中ではさほど重要ではないくらいの違和感を生じることがある…。
ゆえにその「クセ強」「気持ち悪さ」を言葉にするのは非常に難しく、けれど言葉にしたときに意外と共感される。
その変換機能がTwitterなどのSNSに存在するのだろう。
昨今では、その共感をネットなどのメディアが拡散し、固定概念として多くの人が認識していくイメージが僕にはある。

で。
感情やイメージで選挙情勢が動いていく。
その「クセの強さ」を全面に出す候補者もいれば、ひた隠しにする候補者もいる。
なかにはその「クセの強さ」を本人も気づかないで、「クセの強さ」だけが評価・拡散されてしまう候補者もいるだろう。
もはや政策に関する「難しい話」をしない方が、むしろ好まれるのではないか…という思いまで僕は持つ。
情報量の多い動画を道具として用いるのならば、その短い動画に、どれだけ「クセ」を入れていくのかが大切になっていって、良い悪いを別にして政策でみられることは、大きな争点がない場合の選挙にあまり有効ではないのではなかろうか。

そして重要なこと。
そんな「気持ち悪さ」「違和感」を足がかりとして、いかに「フィルターバブル」の中に組み込んでいくのか。
「無党派層」「浮遊層」とよばれる人たちに対して、どうアプローチしていくのかが問題になる。

「フィルターバブル」に取り入れることができたユーザーには、「正のイメージ」を持った動画を流し込んでいけばよくて、そのことがユーザーのタイムラインから「負のイメージ」投稿を駆逐することにもつながるだろう。
テレビが「グルメ・旅番組」や、あるいは「中身のないニュース」を繰り返し放送している限り、ますます高齢層もネットに情報を求めメディアを変遷すると僕は見ている。
今回のように「ネット選挙が若い世代を動かした…」といった論調が的外れになるような気もする。

…ということを、僕はテキストで書いている。

この記事を書いた人

名無しのユータ

「読書が趣味」という訳ではないし、遅読で読解力も低い。けれど、読書を続けることでモノを考える力がやっと人並みに得られると感じ、なるべく毎日、本を紐解いている。
趣味はランニング、植物栽培など。