友人に子どもができたという報せを聞いて

あっという間に結婚しちゃった

人生を生き急いでる?

友人に子供ができた。
高校時代、同じバドミントン部だった彼は、どこか軽薄で、でも憎めない奴だった。
ここ数年、彼は婚活パーティーなどに積極的に参加し、未婚の僕からすれば、「なぜそこまで生き急いでいるのか」と思うほどだった。
その姿を見ていると、まるでなにかの時間との戦いでもしているかのようだった。

そして案の定、婚活パーティーで知り合った女性と付き合い、そのまますぐに結婚。
仕事も大手企業に転職し、あれよあれよという間に人生が進展して今に至る。

高校時代の彼は、ある種の「女たらし」で有名だった。
どういうわけだか、彼がアプローチすると女性が拒否しない。
しかも、同じ部活内の後輩に手を付け、卒業しても長く付き合っていた。
卒業後、なぜか彼は現役部員の合宿に参加し、女子の部屋に入り浸ったとかなんとか。
「なぜあいつは女子部員の部室に入れるのか」という議題は仲間内でもしょっちゅう出てきたほどだ。
男友達の近況や名前すらすぐに忘れるくせに、女子の名前はぽんぽんと出てくる謎の特性を持つ奴で、その特異な記憶力には、今でも首をかしげてしまう(笑)。

しかし、いつの間にか彼女とは別れ、それ以降、浮いた話はあまり聞かなくなった。
社会人となり、30歳を過ぎたころから彼が急にソワソワしてきたのを覚えている。
何かきっかけがあったのだろう、あらゆる手を尽くして女子と出会う機会を探っていった。
おそらく彼の親友が結婚して地元を離れたことも大きかったのかもしれない。
彼の中で、何かが変わったのだ。
それは焦りなのか、それとも成長なのか、僕にはよくわからない。

友人がモテる理由

ヤツが女性にモテる理由が僕には分からなかったが、ここに来て、彼の「女たらし」の性格は、案外女性にとっては必要不可欠なポイントなのかもしれないと思い至った。

第一に、彼は何を考えているのか分からない、あまり自分の意見を持たない。
女性の意見にすぐ賛同する。
これは一見、優柔不断に見えるかもしれないが、相手の意見を尊重する姿勢としても捉えられるだろう。

第二に、優しい。
気分の浮き沈みもあまりないので感情はいつもフラット。
これが女性にとっては安心する部分なのかもしれない。
感情の起伏が激しい人よりも、安定した性格の方が長期的な関係には向いているのだろう。

第三に真面目、仕事は医療関係に勤める親の影響か、きっちりこなす。
なんだかんだ大手企業が故に、それなりの賃金は得ているようだ。
この真面目さと安定性は、将来のパートナーとして魅力的に映るのだろう。

一方の僕は20代後半から、田舎の中小企業で年収300万円に届かない中、休みなく働いていた。
過疎地であるがゆえに出会いもない。
この状況は、僕だけでなく、多くの地方在住の若者が直面している問題だろう。
世間一般的に令和の30代男性はそういうものだと思っていたら、いわゆる「婚期」を逃した気は確かにする。
都会と地方の格差は、単に経済的なものだけでなく、こういった人生の機会の面でも顕著になっているのかもしれない。

僕には「子孫」がいない

墓参りで虚無感に苛まれる

そうだ。
先日、先祖の眠る墓参りに行った。
僕もこの墓に入れてもらうつもりでいるけれど、「家」を継ぐ男系家族は僕しかいない。
運良くこの墓に入れたとしても、この墓を維持管理してくれる僕の家族は今のところ誰もいない。
墓前に立ち、先祖たちの名前を見上げながら、自分の人生の空虚さを感じずにはいられなかった。
人生100年、といったら、あと60年ほど。
そんな長生きする可能性は低いけれど、それほどの長い時間、孤独に耐える自信はあまりない。
この先の人生を想像すると、なんとも言えない寂しさが胸に広がる。

家族を作ることに無頓着すぎていたなと後悔する。

いや、まだまだ行けるっしょ!?という思いもありつつ、マッチングアプリの自身のプロフィールの荒廃ぶりに落ち込む。
年収300万円で誰が「いいね」してくれるのだろうか。
結局はカネ(年収)だろうと思うと、結構はじめの時点で躓いているんだなと感じる。
この社会では、経済力が人間関係にまで影響を及ぼすことに、やるせない気持ちになる。
昨今では「子育て罰」とか「子供は3000万円掛かるサブスク」だとかいろいろと吹聴されるけれども、そこに子供を産んでもいないような僕が文句を言える筋合いもないし、そんな気概もない。
しかし、子育ては大変なのは確実に理解できるけれども、それ以上のメリットはあると思う。
子供の笑顔や成長を見守る喜び、家族との絆、そういった金銭では測れない価値があるのだろう。
金のないおっさんだけではこども1人も作れない…っていうのは、社会的に見ても大きな問題だよな、とは思う。
少子化問題の根底には、こういった個人レベルのプチ虚無があるのかもしれない。

家族を持つことは

トントン拍子に結婚、出産までたどり着いた彼は、もはや勝ち組のように思える。
どこでそんな差がついたのかを考えると、虚しくなるからあまりしないが、やはりパートナーを見つけたいと思う「底力」みたいなものが芽生えたか、芽生えていないのかの違いがあると僕は思う。
その「底力」とは、単なる欲望ではなく、人生のパートナーを求める真摯な気持ちで求めること。
それは、大人になることの「成熟」にも関係する要素だと思うし、成熟を目指さないまでもそうした「家庭を持つこと」が人間を成熟させるのだろう。
こんな類のことは良く聞くけれど、だからこそ真実なのだろう。
家族を持つことで、自分以外の誰かのために生きる経験が、人間を大きく成長させるのかもしれない。

僕にはその一歩を踏み出す原動力や勇気がなかったな、と今にして思えばある。
しかし、人生はまだまだ長い。
これからどんな出会いや機会が訪れるかわからない。
ただ、友人の幸せを素直に喜びつつ、自分の人生も前を向いて歩んでいこうとは思う。
何ができるか分からないけれど、無縁仏は避けたい(笑)。
それと、年収を増やす術をどうにか確立しないと、自分ひとりでさえ生きていくことは難しいだろう…。

友人の幸せな報せは、僕にとって羨望の対象であると同時に、自分の人生を見つめ直す貴重な機会となった…というハナシ(終)。

この記事を書いた人

名無しのユータ

「読書が趣味」という訳ではないし、遅読で読解力も低い。けれど、読書を続けることでモノを考える力がやっと人並みに得られると感じ、なるべく毎日、本を紐解いている。
趣味はランニング、植物栽培など。